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時代の変遷を実感できる映画『22年目の記憶』

時代の変遷を実感できる映画『22年目の記憶』 時代の変遷を実感できる映画『22年目の記憶』

새해 복 많이 받으세요.(セヘポン マニ パドゥセヨ)

チョンソンです。

日本では3が日が過ぎると「あけましておめでとうございます」というのはちょっと変な感じがしますが、韓国では설날(日本の旧正月にあたるので、今年は2月4日)までは、この挨拶を使っていいと聞いたことがあるので……。

 

皆さんは「好きな韓流スターは?」と聞かれたら誰を答えますか? きっと全員、違う名前になるのではないかと思います。

でも「韓国の名優は?」という質問だったら? アン・ソンギかソル・ギョングと答えて、異論をはさむ人は少ないのではないでしょうか。

アン・ソンギは1957年に子役でデビューしてから、実に芸歴50年を迎えた国民的役者です。子役時代から現在まで幅広い作品に出演していますが、日本で2004年に公開された『シルミド』は、ご存知の方も多いと思います。

 

一方のソル・ギョングは崔正憲さんも取り上げている『ペパーミント・キャンディ』(ブログ記事はこちら)の主演をつとめた俳優です。この作品で共演したムン・ソリが脳性まひの女性・コンジュを演じた『オアシス』では、コンジュと愛情をかわすピュアなろくでなしを演じ、高い評価を得ました(私はこの作品を思い出すたびに胸がギュッとなるので、未見の人はぜひ見て欲しい)。

彼は韓国で「カメレオン俳優」と呼ばれていたように、どんな役にもなりきり、ピッタリはまることで知られています。

昨年日本でも公開されて大いに話題になった『1987、ある戦いの真実』(ブログ記事はこちら)では、警察に負われる民主運動家を演じていました。ちなみに『シルミド』でアン・ソンギとも共演していて、異様に男臭い演技を披露しています。

 

そんなソル・ギョングが主演をつとめる映画『22年目の記憶』http://www.finefilms.co.jp/22nenme/ が公開されたので、さっそく見てみました。韓国では2014年に公開されたようですが、これが「なんとタイムリーな。でもこういう作品が作れる時代になったんだな」と思える作品でした。

 

時は朴正煕による独裁政権時代の1972年。南北共同声明が発表され、初の南北首脳会談が計画されていました(これは実話)。

その頃、シングルファザーのソングンは売れない俳優をしていたものの、チャンスをモノにできず腐った日々を過ごしています。

© 2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

 

舞台で失敗したある日、1人の男性からオーディション参加を勧められるのですが、その役はなんと金日成。南北首脳会談に向けての事前リハーサルで、彼の代役を演じる俳優をKCIA(韓国中央情報部)が探していたのです。

© 2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

 

見事にオーディションに受かったソングンは厳しい訓練をこなすうちに、金日成が乗り移ったかのようになっていきます。

そして22年後、ソングンは金日成が乗り移ったままの日々を過ごしていて、息子のテシクは彼を見放していました。しかしある目的のために、テシクは再び父と生活するようになるのですが……。

© 2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

 

やせ型のソル・ギョングが特殊メイクで恰幅の良い老年男性になっていて、ちょっと風間杜夫風に見えなくもないですが、仕草や言動はまさに北の指導者といった感じでした。さすが「カメレオン俳優」だけあります。

© 2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

 

ソングンがなぜ金日成のままだったのかと言えば、メンタルバランスが崩れていたから。ではなぜ彼のメンタルは崩壊したのか。それは韓国の歴史が、大いに関係していました。

南北首脳会談が初めて開かれたのは2000年の金大中政権時代、つまり1972年に会談は開かれなかった。役を演じきろうとしたにも関わらず披露する舞台がなかったことで、ソングンは役を手放す機会を失ってしまったのです。

 

金日成になりきったソングンはいちいち芝居がかっていて笑えるし、ストーリーのテーマは父と息子の絆で、政治的な作品ではありません。しかしソングンが演技指導を受ける場所が対共分室(共産主義者や政府に従わない者を拷問し、自白させるための取り調べ施設。かつて存在した)だったり、金日成の思想を教えるのが対共分室に監禁され、拷問を受けていた大学生だったりと時代性と政治性がにじみ出ています。

日本では映画に政治的な要素が盛り込まれた途端に敬遠する人もいますが、韓国映画は何を描くにしても、政治と切り離せないことがよくわかります。

しかしここまで金日成をネタしたエンタメ作品が作られ、韓国内で公開されるとは。彼が存命だった頃には決して無理だったろうなと思います。

 

前半はシリアス・中盤はコメディ・ラストはハートウォーミングと、話が展開するにつれてテイストが変わっていきます。

息子のテシクを『神弓-KAMIYUMI』主演のパク・ヘイルが、暴力的なKCIAの長官をドラマ『根の深い木』でも相当悪い役だった、ユン・ジェムンが演じています。

 

5日より公開されていますので、見に行かれるならお早めに。

ではまたアンニョン。

 

(チョンソン)

 

映画『22年目の記憶』公式ホームページ

劇場情報はホームページからご確認ください。