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グエムル -漢江の怪物-(2006)

グエムル -漢江の怪物-(2006) グエムル -漢江の怪物-(2006)

アンニョンハセヨ!

今回ご紹介するのはグエムル 漢江の怪物という映画です!

(ちなみにグエムルというのは怪物という漢字語の韓国語読みです。ハングルで‘と表記しますが実際の発音はグエムルよりクェムル、ケムル、に近いです。)

簡単な映画のあらすじですが…

ソウルの真ん中を流れる漢江沿いで露天商をしているカンドゥ(ソン・ガンホ、突如現れた怪物に娘のヒョンソが拐われてしまいます。ヒョンソを救うため怪物を探すカンドゥ一家のお話です。

グエムルは昨年“パラサイト 半地下の家族”でアカデミー作品賞を獲得したポン・ジュノ監督の作品です。有名な作品なのでご覧になった方も多いことでしょう。

なので今回はネタバレを気にせず、積極的に作品について話していきたいと思います!むしろ映画を見たけど面白さがよく分からなかった人向けです。笑

 

初めこの作品を見たのは、2008年、私が高校を卒業し韓国に渡った初めの年でした。今はなき国際教育振興院という韓国語を勉強する学校で、授業中に先生が見せてくれました。この映画のことはふんわりと怪物が出てくる映画だと見る前から知っていました。しかし見た後何か違和感を感じました。

“これって怪物映画なのか?自分が想像してた内容と違う…

なぜそう思ったかというと、当時の自分の中で勝手にイメージしていた怪獣映画とは違ったためです。怪獣モノ=幼い時に見た日本のウルトラマン、ゴジラやガメラと先入観があったのです。この映画にはウルトラマンのように怪獣をやっつけてくれるかっこいいヒーローが出てくるわけでもない。ゴジラやガメラのように怪獣同士の迫力ある戦いがあるわけでもない。

出てくるのは平凡な家族、それもやや頼りない雰囲気。そして出てくる怪物はこれまたグロテスクな気味の悪いビジュアル。ゴジラみたいに恐竜好きな子供心をくすぐるデザインとは程遠いわけです。

後々考えてみると社会問題と関連づけている設定は初代ゴジラに近いものがあますし、グロテスクなモンスターはどちらかというとエイリアンなどのアメリカ映画のモンスター近いものがあります。)

とにかく自分の思っていた怪獣モノではなかったためちょっと驚きました。

そしてなぜこの映画が大ヒットしたのか当時の自分には少し疑問でした。

(観客数1300万人を動員し当時の興行成績第1位の記録を塗り替えました。海外でもある程度好成績を収めたそうですが日本では苦戦したようです。おそらく私と同じように日本の怪獣映画を期待したためではないでしょうか?)

そして数年後にまたグエムルを見る機会があったのですが、その時になってこの映画が韓国で大ヒットした理由が分かりました。

この映画は怪物映画ですが、かっこいいヒーローは登場しません、その代わりにヒョンソを救うために命をかける家族が登場します。映画自体反米性を表した社会風刺む作品で、それをポン・ジュノ監督も公言しています。しかしそれだけでなく映画に登場する家族の設定がなんとも韓国庶民の共感を呼ぶ社会風刺をしているのです。

そんな家族ですが…

過去に家庭を疎かにした祖父ヒボン、なんだか頼りない父カンドゥ、学生運動に身を投じたため就職でずにいる叔父のナミル、アーチェーリーの国家代表であるが肝心な場でなかなか結果が出せない叔母さんのナムジュ、この4人がヒョンソを救うため頑張ります。

銃の扱いが上手い祖父ヒボンはおそらくベトナム戦争を経験した軍人でしょう。

少し抜けていて学のないカンドゥは露天商という貧しい生活をするしかない。

カンドゥが少し間抜けなのは彼が幼い頃ヒボンが家庭を顧みなかったせいだと言っています。つまり経済発展に力を入れ過ぎたあまり社会に取り残されていった人々を比喩しているのではないでしょうか。漢江の奇跡と言われる韓国の経済発展ですが、その成長の裏にはベトナム戦争や貧富の格差など暗い部分もあります。

そして大学を出ているナミルは学生運動をしていたせいで仕事が見つからない。軍事政権が続いた韓国では学生運動が盛んに行われていました。そんな民主化のために戦った学生も体制に反抗的という理由で就職差別を受けることもあったそうです。

家族の中では一番成功しているように見えるナムジュも厳しい競技の世界では1位にならないと評価されない立場です。韓国では日本のように文武両道は難しいです。学生時代から勉強に集中する学校、運動に集中する学校に別れます。しかし競争の厳しいスポーツの世界、全員が成功できるわけじゃありません。なかなか芽が出ずスポーツの道を諦めたとしても、今まで運動ばかり勉強に時間を使うことができなかったため、その後の進路に悩む人が多いと聞いたことがあります。

このような韓国社会を風刺するキャラクター設定がある上で、この家族に共通しているのがヒョンソを救いたいという家族愛です。共感を抱くことのできる平凡な家族が怪物に立ち向かう姿、そして家族愛という分かりやすいテーマが多くの韓国の観客に共感を与え大ヒットにつながったのでしょう。

私自身が実際韓国に住み、韓国の人々と交流し、韓国のことを知ることでこのようにこの映画の深みを知ることができたわけです。映画って奥が深いですね。

 

ちなみにヨイドの漢江公園にはグエムルのオブジェがあります。

グロテスクで気持ち悪くて不評だと聞いたことがあります。笑

 

もう一つちなみに前回紹介したミナリですが、ユン・ヨジョンさんが最優秀助演女優賞を獲得しましたね。これを記念して火女”(1971)というユン・ヨジョンさんのスクリーンデビュー作が50年ぶりに映画館で再上映されています!

 

それではまた次回!

ジニュン