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ないない尽くしにゃ福がある⁉映画『チャンシルさんには福が多いね』

ないない尽くしにゃ福がある⁉映画『チャンシルさんには福が多いね』 ないない尽くしにゃ福がある⁉映画『チャンシルさんには福が多いね』

 アンニョンハセヨ。チョンソンです。ようやく2020年も終わりが見えてきましたね。正直、あまりいい年ではなかったと思うので(ソウルにも1月に行ったきりになってるし)、早く終わってリセットして欲しいな……なんて思っています。

 この1年で自分的に変わったなあと思うのは、ドロドロしたり人が死にまくる作品を見るのがキツくなったことでしょうか。韓国ドラマお得意の陰謀や裏切り、騙し合い、時代劇によくあるバタバタ人が斬られるシーンに差し掛かると、倍速再生するようになりました。

 だから何かと主人公に都合のいいことばかりが起きる『愛の不時着』とかは、以前なら「こんなご都合主義の話、ある訳ないだろ!」と思っていただろうけれど、今はあの、主人公のために世界があるかの如き展開に、むしろ安心してしまったほど。

 こういう「安心して見られる話」って、映画にもないものだろうか? と思ったらありました! それが18日から公開される『チャンシルさんには福が多いね』です。

出典:https://www.reallylikefilms.com/chansil

 

 縁起の良さそうなタイトルだけど、主人公のチャンシルは40歳になったけれど家無し&夫も子供もなし、その上映画のPD(プロデューサー)をしていたのに、ある日突然失業してしまいます。「ないない尽くしの孤独なアラフォー」で、福が多いとは正直言い難い。

 しかも住んでいた家を引き払って向かった先は、タルトンネ(坂の上の、小さな家が密集した地域)の一軒家。といっても持ち家どころか、1人暮らしの老婆の家に間借りするという、ちょっとあり得ない展開が彼女を待ち受けています。さらに映画制作会社の女社長には「あなたの居場所なんてない」と言われる始末で、仕事復帰もままならない。年下の友人で女優のソフィの家政婦をすることで、なんとか生活を立て直そうとしていくのですが、ソフィの家でかつての仲間と鉢合わせてしまうなど、気まずいこともちょいちょい起こります。

 まさに踏んだり蹴ったりで、とても安心して見られそうな話とは思えない。しかも「それでもチャンシルさんは健気に前向きに、懸命に努力して頑張っていく……」という話でもない。でも見ているうちにいつしか、ほっとした気持ちになっていたのです。

 その理由のひとつが、女性同士の間に絆が感じられたこと。大家のポクシルは、「女が学問をすれば浮気する」と言われた時代を生きてきたことから、ハングルが書けずに識字教室に通っています。彼女の勉強を手伝ううちにポクシルの人生に触れ、変わり者の老婆だと思っていた彼女との距離が近づきます。またソフィも、チャンシルが映画関係者でなくなってからも、彼女をとても大事に思っています。辛辣な同性もいれば、繋がれる同性もいる。やはり映画絡みの仕事をしていた年下の男性や、「幽霊のような」謎の男性も現れますが、彼らは言ってみればバグのようなもの。寂しいからといって異性の手を握らなくても、温かさは十分に感じられるという❝福❞が、チャンシルにもたらされるのです。

 そして心が弱っていると、優しくしてくれる相手を恋と錯覚したり、なくしたものばかりに目が向いてしまうもの。まさにそんな状態に陥っていたチャンシルは、「幽霊のような」存在によって自分自身と向き合い、歩み方を変えていきます。人生は前に進むだけではないし、自分がしたいことは自分で叶えるもの。そんな真の自立という❝福❞にも、彼女は気付くことができます。

 チャンシルを演じるカン・マルグムは中学校でのいじめをテーマにした『凍てついた愛』というドラマで、いじめる側のうちの1人の、母親役を演じていました。一見正論を言っているようだけど、非常に狡猾で冷酷な憎々しい役柄だったので、がらりと違うチャンシルはとても新鮮に見えました。

(『凍てついた愛』はGYAO!で第一話が無料公開されているので、興味があれば見てみてください→こちら

 

 また謎の男性は『愛の不時着』の耳野郎こと、キム・ヨンミンが演じています。耳野郎も良かったのですが、ドラマ『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』で主人公を陥れようとする社長役がこれまた非常に憎々しかったので、こちらもやはり振れ幅の大きさに驚くばかりでした。

 彼がなぜいつも真っ白なランニング&トランクスなのかをはじめ、随所に映画作品へのオマージュが込められていますが、これはキム・チョヒ監督自身の、映画に対する思いによるもの。元ネタを知らなくても楽しめるけれど、それこそアラフォー以上の映画好きなら、「あ、あれって……」という楽しみ方もできるかもしれません。

 ということで現実が厳しいのだったら、エンタメぐらいは優しい世界に触れたいよと深く思うチョンソンなのでした。ではまたアンニョン。

 

チョンソン