関東大震災の朝鮮人虐殺否定論には、「発明者」がいた!

2019年08月13日
 チョンソンです。
今年ももうすぐ9月1日がやってきますね。あ~夏休みが終わる日、って違うよ! 
 
1923年に関東大震災が起きた日です。この地震では多くの犠牲者が出たのと同時に、『朝鮮人が井戸に毒を入れた』『朝鮮人が暴動を起こした』などのデマ(流言)によって朝鮮人が虐殺されたことがわかっています。
 

 しかしここ数年、SNSなどでは地震や事件が起きるたびに同様のデマが流されたり、「虐殺はなかった」「震災で朝鮮人が殺されたのは暴動を起こしたからだ」という主張が持ち上がったりしています。そして2017年には小池百合子東京都知事が、歴代の都知事が寄せていた朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を取りやめる事態が起きました。小池知事は2018年も、追悼文を送っていません。そして今年も取りやめるとのこと。

 

 「朝鮮人虐殺はなかった」「朝鮮人が暴動を起こしたのは事実」という主張は一体どこから出てきたのでしょうか? 

震災当時の資料や証言などから虐殺の真相を描き出した『九月、東京の路上で』(ころから)著者の加藤直樹さんによれば、この虐殺否定論には「発明者」がいるそうです。そこで加藤さんに、お話を伺ってきました。

加藤直樹さん

 加藤さんは7月に『TRICK 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(ころから)という本を出版しましたが、その中で取り上げているのが、作家の工藤美代子氏とその夫の加藤康男氏です。工藤氏は怪談エッセイなどで知られるノンフィクション作家ですが、2009年に『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』(産経新聞出版)という本を出していて、これが朝鮮人虐殺否定論が生まれるきっかけになったと言います。

 

「工藤氏はこの本の中で震災直後の流言記事をまとめて、「暴動があったじゃないか」と書いています。しかしこれは色々な資料を切り貼りしたり、出典を明記しながらもそこに書いていないことを書いているような、そんな造りの本だったんです。2014年に『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』(ワック)という新版で再登場しますが、なぜか著者名は夫の加藤康男氏に交替しました。同じ本の著者表記が別人に変わるなんて、前代未聞だと思います」

 

 加藤さんによれば工藤夫妻の本は

・流言に基づく震災直後の記事を「証拠」扱いしている

・流言を否定しているその後の記事は黙殺

・虐殺の研究書から流言記事を抜き出して悪用

・史料を都合に合わせて切り貼りしている

・原典が書いてもいないことを「参照」してみせる

といったように、「虐殺はなかった」という結論を導き出すためにあらゆる史料を都合よくピックアップしたもので、「トンデモ本」どころか「トリック本」だと言います。

具体的な内容はぜひ『TRICK』をチェックして欲しいのですが、加藤さんは虐殺否定論がどのように成り立っているか、どんなデッチあげがあるかを調べるために半年以上、国会図書館に通い続けたそうです。そして検証を続けるうちに、深く傷ついたと語ります。

 

「虐殺否定論がどういうトリックに基づいたものなのか、きちんと根拠を挙げて否定していくことには、とても労力がかかりました。最初のうちは途方にくれたこともありましたが、次第に彼らがさまざまな嘘をついていることが見えてきました。同時に、それによって自分が傷ついていることに気づきました。だってフィクションならまだしも、ノンフィクションを標榜する書物で意図的な嘘が行われていたら、本という存在自体を信頼することができなくなってしまいますよね? 彼らがやったことは、まさに書物に対する冒涜で、ボクシングだと思って観戦していたのに、ボクサーがプロレスを始めるようなもの。彼らが書いたものを検証してその悪意を知れば知るほど、殺伐とした気持ちになりました」

 

 また悪意が生んだデマがSNSなどで蔓延していることもあり、加藤さんは「本を書いても届かないのではないか」という思いもあったと言います。

 

「本は流し読みできるウェブの記事と違って、読みたい人しか読まないから届かないだろう、ウェブで書いた方がいいだろうと思っていました。でも工藤夫妻の本を根拠にしている人がいるように、書籍にすれば資料として、誰かに引用してもらえる可能性もある。図書館などに置かれれば、次世代に読んでもらうこともできます。 虐殺否定論を「一部のおかしな人たちが言ってるだけ」と言う人も多くいますが、荒唐無稽だからといって甘く見てはいけません。

小池都知事が追悼文送付を取りやめたのは、都議会で古賀俊昭都議が「(朝鮮人暴動は事実だから)追悼の辞の発信を再考すべき」と質問したことが影響していて、古賀都議は工藤夫妻の本を主張の根拠としていました。荒唐無稽であっても書物が、現実を動かしてきたんです。」

 

 では悪意にまみれた酷いデマに抗うには、どうしたらいいのでしょう。それは歴史の真実を今を生きる私たちが受けとめ、次世代に語り継いでいくことだと思います。

 

 9月1日には墨田区にある旧陸軍被服廠・現在の横網町公園で、朝鮮人犠牲者の追悼式が予定されています。また9月7日には朝鮮人が虐殺された荒川河川敷(京成線の八広駅を下車して河川敷に向かえば、式典会場が目に入ります)で、『韓国 朝鮮人犠牲者追悼式』が開催されることになっています。横網町公園の追悼式は1973年から続いていて、ここに建つ追悼碑は宗教者や都議会の全会派が集結し、与党の国会議員から個人まで600人・250団体が協力してできたものです。立場や党派、イデオロギーの違いを越えて、多くの人の「朝鮮人犠牲者を追悼したい」という思いが形になったものと言えます。だから当日は1人でも多くの人に足を運んでもらいたい

と、加藤さんも訴えます。

 

 「追悼碑を守り追悼式典を続けることは、先人たちの「二度と悲惨な歴史を繰り返したくない」という思いを、子孫に繋いでいくこと。そうすることで「虐殺はなかった」という歴史修正主義に打ち勝つことができるはずです。だから1人でも多くの人に、追悼式典に足を運んでいただけたらと思います。」

 

 横網町公園での追悼式は11時から、荒川河川敷は15時から開催される予定です。

ぜひ今年は、皆さんにも追悼の現場に足を運んでもらえたらと思います。

ではまたアンニョン。

 

(チョンソン)

   

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