ハングルに命を懸けた人達の映画『マルモイ ことばあつめ』

2020年05月19日

アンニョンハセヨ。チョンソンです。

 皆さんは92回アカデミー賞の作品賞などを受賞した『パラサイト 半地下の家族』はご覧になりましたか? 最近は正義感的な役が多かったソン・ガンホが久々にはじけていて、そういう意味でも私は楽しめました。彼の次回作は『わが国の語音』という作品ですが、なんと世宗大王を演じているそうです(日本での公開日は未定)。

 世宗大王が訓民正音(ハングル)を作るまでは、ドラマ『根の深い木』でも描かれています。こちらはハン・ソッキュが演じていて、奇しくも映画『シュリ』の特殊要員コンビが、ともに世宗大王を演じたことになります。

 そして今回紹介する映画『マルモイ ことばあつめ』という作品も、このハングルがテーマになっています。

 (公式HP→https://marumoe.com/

 

 ハングルが生まれるまでは書物は漢字漢文で書かれていたため、学のある者しか読むことが出来ませんでした。だからハングルは、文字を広く民に知らしめたすばらしい発明と言えます。でも日本が支配していた時代は、使うことが認められていませんでした。皇民化教育という名のもと、日本語標準語を公用語として押し付けられることになったから。しかしその失われつつある言葉を、必至で守ろうとしていた人たちがいました。それが朝鮮語学会のメンバーです。

 映画はこの朝鮮語学会のメンバーのジョンファンと、無学なお調子者のパンスの出会いから始まります。2人は当初対立していたものの、ジョンファンが仲間とハングルで書かれた書物を売る傍ら、朝鮮語辞典の編さんをしていることを知ったパンスは、朝鮮語学会の雑用係として彼らと行動をともにします。

 

 裕福な親日派の家で育ちいつも仏頂面のジョンファンは、なかなかパンスに心を開こうとしません。しかしパンスが字が読めないながらも肉体を使い、まさに肉体言語で微妙なニュアンスを表現していく姿や、ハングルを学ぶことで世界が広がっていくさまを目にするうちに、仲間として認めるように。そしてパンスの娘・スンヒがおいしそうに「ホットック」を食べているとその語源を教えたり(これは私も初めて知りました!)、各地のサトゥリを集めるために開いた秘密会議で司会をつとめたりする中で、実に豊かな表情を見せていきます。自分たちの言葉というものが民族に誇りをもたらし、そして生きるための力になっていくことが、とてもよくわかる作品になっています。

https://www.youtube.com/watch?v=60RIeI-fWJA

 しかしこの話は決して、明るいものではありません。話が進む中でメンバーや支援者は徹底的に邪魔され、存亡の危機を迎えていきます。朝鮮語学会のメンバーが1942年に治安維持法違反を理由に30人以上が検挙され、うち2人が拷問により命を落とした史実を無視するわけにはいかないからです(とはいえ、映画のキャラクター設定は創作ですが……)。

 それでも今も絶えることなくハングルは使われています。日本が戦争に負けたということが大きな理由ですが、弾圧を受けても命がけで守ろうとした人たちがいたことも、大事な要素だと思います。普段何気なく使っている「言葉」ですが、民主主義同様、それは当たり前に存在するものではない。大事にし続けなければ簡単に奪われてしまうものなのだ。そんなことを改めて考えさせられる作品でした。

 パンスを演じるのは、『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『1987、ある闘いの真実』に出演していたユ・へジン。ソン・ガンホとは『タクシー運転手』だけではなく、かつて辛ラーメンのCMでも共演しています。ジョンファンを演じたユン・ゲサンは今年1月まで韓国で放送されていたドラマ『チョコレート』(NETFLIXで視聴できます)でも、とても切ない演技を披露しています。またやはり『タクシー運転手』やドラマ『ミセンー 未生ー』『黄金の私の人生』などでの怪演でメジャー入りしたチェ・グィファがカメオ出演しているのも、見どころのひとつと言えるでしょう。

 緊急事態宣言により全国の映画館が臨時休業の憂き目に遭っているなか、522日を予定していた公開も延期になったようです。でもそう遠くないうちに見られることでしょう(っていうか、それを祈りたい)。

 映画館に図書館にと、今となっては恋しくも遠い場所がたくさんありますね。大きなスクリーンで映画鑑賞できる幸せをかみしめるために、私も公開されたらまた見たいと思います。

ではまたアンニョン。

 

(チョンソン)

 

出典:https://marumoe.com/

シネマート新宿&シネマート心斎橋ほか全国順次公開(詳細はこちら

   

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