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在日コリアンが日本で生きることそのものを、この裁判は問うている

在日コリアンが日本で生きることそのものを、この裁判は問うている 在日コリアンが日本で生きることそのものを、この裁判は問うている

 2018年7月12日、金竜介弁護士と金哲敏弁護士の2人が東京簡易裁判所と静岡簡易裁判所に、損害賠償をもとめる訴えを起こしました。

 金竜介弁護士ら18名の弁護士は2017年11月から12月にかけて、北海道から九州までの全国の約950名から懲戒請求を申し立てられました。18名のうち10名は2016年度の東京弁護士会の会長や副会長などでしたが、残り8名は在日コリアン、つまり同胞の弁護士がターゲットとなりました。

 なぜ8名の在日コリアン弁護士が懲戒請求されたのか。事由の要旨には

違法である朝鮮学校への補助金交付の会長声明に賛同、容認、その活動を推進することは、弁護士の確信犯的犯罪行為である。
利敵行為としての声明のみならず、直接の対象国である在日朝鮮人で構成されるコリアン弁護士会との連携も看過できない。
この件は、別途外患罪で告発している。あわせてその売国行為の早急な是正と懲戒を求めるものである。

 とあったそうです。
2016年4月に東京弁護士会は、「朝鮮学校への適正な補助金交付を求める会長声明」を発表しています。しかし金竜介弁護士によると8名は所属事務所も活動内容もバラバラ、業務上の繋がりはないし、朝鮮学校を支援している人もいれば距離を取っている人もいる。在日コリアンであることがわかる名前を名乗っているものの、朝鮮籍・韓国籍・日本籍と国籍もさまざま(金弁護士は日本籍)。つまり「たんに朝鮮半島にルーツがある弁護士が、その属性のみで懲戒請求の対象として選択された」ことがうかがえます。

 弁護士の懲戒請求自体は認められた権利で、誰でも行うことができます。しかし「気にくわない」といった私怨や嫌がらせ目的の請求は、不当なものとして判断されます。そして弁護団の高橋済弁護士が「人種差別撤廃条約上の人種差別に該当する不法行為。変更することができない国籍や民族という属性を理由として攻撃のターゲットにする。それが人種差別だ」と説明したように、今回は明らかに人種差別目的の懲戒請求です。ちなみに外患罪というのは「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させ、又は、日本国に対して外国から武力の行使があったときに加担するなど軍事上の利益を与える犯罪」のことですが、日本に住み日本で働く弁護士が、在日コリアンというだけでテロ行為を起こすのではと考えるのは、この上ない侮辱です。

 金竜介弁護士は記者会見上で

「懲戒請求は住所と名前を書いて印鑑を押す行為。恐ろしいと思うのは日頃から在日コリアンに対するネットでの悪意表現を見ますが、それは匿名。今回送られてきたものは自分の住所を書き名前を書き印鑑を押している。これまでは『社会的に認められない恥ずかしい行為』だからと匿名で行われていたことが、堂々とヘイトスピーチ、人種差別できるようになった。ネットユーザーが書き込みをする行為と、自分の住所を紙に書いて印鑑を押して郵送する行為、これにはかなりの差がある。そこまではやらないだろうという、タガが外れた」

と言いました。
 今回は950名全員ではなく、弁護団が定めた基準で選んだ相手を提訴していますが、被告の数はおよそ数十名で、請求金額については「金額の問題ではないし、ネットなどでいわれのない批判をされる」ことを避けるために非公表となっています。中には「私は洗脳されていた」「いいことをしていたと思った。申し訳ないことをした」などと書いたお詫び文を送ってきた被告もいたそうですが、金弁護士はこれを「お詫びだとは思えないし、差別に踏み込んでもいない。神経を逆なでされました」とバッサリ切り捨てました。

 今回なぜこの裁判をここで取り上げたのか。それは皆さんに

私たちの人生は祝福されたものであり、その自由は誰によっても奪われるものではない。だから時に理不尽なことが起きたら声をあげ、人生と自由を守る必要がある。それは自分や家族、そして同胞を守ることにも繋がる。もちろん1人で背負うことはないし、辛いときは誰かに「助けて」と頼ることも、立派な「声をあげる」行為のひとつだ。そして本当に辛い時は、全部投げて逃げてもいい。でもあなたは決して1人ではないのと同時に、声をあげる同胞を1人っきりにしてはならない。

ということをどうか、覚えていて欲しかったからです。

 会見の最後、金竜介弁護士は「この裁判で何を問いたいかは1人1人に考えていただきたい。私が被告に聞きたいのは『自分も騙されていたんです』ということではなく、自分は正当だと思っているならなぜそう思うのかということ。法廷でそれをきちんと述べていただきたい。ごまかさないでいただきたい。あなた(被告)が自分の意思で正しいと思ってやったことは、調子にのって「いいね!」ボタンを押してしまうこととは全く違う。繰り返しになりますが、自宅の住所を書いてそれに判を押して郵送することまで、なぜできたのかということを考えてもらいたい。それを公の法廷で明らかにしましょう」と言いました。

 この裁判で争われるものは、弁護士2人の尊厳だけではありません。私たち在日コリアンがこの社会で生きるための権利がかかってると言っても、過言ではないと思います。だから皆さんも他人事と思わず、今後を一緒に見守り、応援してください。

(チョンソン)

会見する金竜介弁護士(左端)。なお、金哲敏弁護士はこの日は欠席。

 

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同ニュースのリンクはこちら

◯弁護士ドットコム NEWS 「堂々と人種差別された」大量懲戒請求を受けた弁護士が提訴「タガが外れている」

◯朝日新聞 DIGITAL 「在日コリアン理由に懲戒請求」弁護士2人が損賠提訴

◯NHK WEB NEWS  在日コリアン理由の大量の懲戒請求 弁護士が慰謝料求め提訴

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